プロジェクション・フィルム(仮)

いろいろ考えたことを言語化して焼き付けておくためのブログ。話題は研究・身体・生活から些細な日記まで雑多に。ほぼ毎日21時更新です

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脳科学の本とブッダの本と

こんばんは,ゴドーです。


最近読んで面白かった本の紹介。

単純な脳、複雑な「私」

単純な脳、複雑な「私」

この前の記事で取り上げた池谷裕二先生の『進化しすぎた脳』の続編。

前巻と同様に高校生への講義形式で読みやすいです。


個々の脳細胞は単純な処理を行っているだけなのに,その繋がり方によって意識が生まれるという複雑系の話。

また,錯視の話から始まり,脳は現実をそのまま解釈しているのではなく,様々な推測や補完を行っているという話。

自分の行動を認識して,後から理由をつける「作話」を自覚できない話など,もはや全ての行動は"私”が考えて行動しているとは言えないのではないかと,非常にエキサイティングな講義の連続でした。


海馬 脳は疲れない (新潮文庫)

海馬 脳は疲れない (新潮文庫)

こちらは池谷先生と糸井重里さんとの対談本。

経験記憶は年をとっても衰えず,どこまでも成長し続けるなど,ポジティブな話題が多かったですね。

どちらかというと「実用的」っぽい感じかも。


代わってこちらはブッダの仏教に関する本。

仏教と一口に言っても様々な宗派がありますし,少なくとも日本に入ってきた仏教とブッダ本来の教えは根本的に異なる面があります。

個人的には,かつて手塚治虫の『ブッダ』を読んで「仏教のイメージと違うな」と感じた疑問が,この本を読むことで氷解しました。

いわゆる創造神のような絶対的存在をおかないブッダの思想は,かえって無宗教派の人にも受け入れやすいように思いますね。


作者の佐々木先生はブッダの教えについて,脳科学の知見から理解しようとされている面白い先生です。

実際,先の池谷先生の本で出てきたような話題がこちらの本でも出てきて,そのシンクロニシティにびっくりしました(笑)

ブッダの仏教における大切な考え方のひとつに「諸法無我」という言葉がありますが,「自分という存在はあるのか?」という最近の脳科学的な発見と共通点があって非常に面白いところ。


ジャンルに拘らずいろいろな本を読んでいると,意外と同じような話が出てくることに気が付きます。

あるいは,読書によってその分野に関する感受性が高まっているおかげで,別の本の中で同じような文脈が出てきたとき自然と想起されるのでしょう。

読書は乱読に限るなあと思う次第です。


それでは,また。

/ゴドー