こんばんは,ゴドーです。
昨日観劇した「アルトゥロ・ウイの興隆」について思ったことを。
元々の脚本は1943年,第二次大戦中にドイツ人脚本家ベルトルト・ブレヒトによって書かれたものだそうです。
そのメッセージは明らかで,オーストリアを併合し更に勢力拡大せんとすアドルフ・ヒトラーの姿を,シカゴ市を支配しようとするアメリカギャングに擬えたもの。
劇中に起こる事件の流れも,実在の事件の流れに沿ったものになっています。
ドイツ語のタイトルには「抑えることができた」という題が付いており,ブレヒトの気持ちが現れていますね。
オリジナルの演出がどのようなものだったのかは知りませんが,今回の舞台は後ろにバンドが控えた音楽劇になっていました。
ジェームズ・ブラウンの楽曲が使われており,主演の草なぎ剛さん始め役者さんが踊るシーンも多数と,ちょっとしたアイドルライブ感もありました。
物語はギャングのボスであるアルトゥロ・ウイがシカゴ市・シセロ市とその支配を広げ,人々を恐喝や暴力で従わせていき,とうとう舞台上に反対者がいなくなった場面でクライマックスを迎えます。
ノリのいい楽曲に合わせ,観客を煽って手拍子させる高揚感のあるシーン。
正にライブ会場のような雰囲気に包まれるわけですが,これは正に,ヒトラーが群衆を熱狂させて支持を得た様そのものの再現になっているのですね。
そう考えると,草なぎさんというスター性のある役者を主演に据えたのも,全て演出家である白井晃さんの狙い通りだったのかなあと思ってみたり。
スポーツの試合で盛り上がったりするように,必ずしも熱狂が悪いことではないとは思いますが,冷静さを欠いてしまうのはよろしくないですね。
特に「あいつは敵」「あいつらは間違っている」のような敵愾心は思考停止に繋がりがち。
バタバタしている時代だからこそ,熱狂の渦から離れて冷静に見つめることが大切なのだと感じました。
それでは,また。
/ゴドー