こんばんは,ゴドーです。
内容も興味深く,また人にオススメできる本だと思ったので記事にします。
- 作者: 阿刀田高
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/05/17
- メディア: Kindle版
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本の内容は旧約聖書のエピソードを元にしたエッセイです。
阿刀田さんといえば小説のイメージがあったので,この本も旧約聖書を題材にした小説なのかと思っていましたが,阿刀田さんの目から見た旧約聖書を紹介するような構成になっていますね。
旧約聖書しかり,古くからある古典の原典は日本語訳で読むにしてもしばしば言葉遣いが難しく,読解するのに苦労することが多いですが,この本は旧約聖書の有名なエピソードを口語調で軽く説明してくれるので,入門編として非常によいと思います。
あと,この本で好きなところは,著者の阿刀田さんが「異教徒」の目から冷静な分析を加えている一方で,旧約聖書の存在や立場をリスペクトしているのが伝わってくるところです。
旧約聖書の記述をそのまま歴史通りのものとして受け止めるにはあまりに突拍子もない出来事が書かれていたりして,純粋に信じ込むことは難しく,どうしても「異教徒」の立場で読むことになると思います。
一方で,旧約聖書には現実的に起こりえない出来事が書かれているからといって,「昔の人はこんなものを信じていたのさ」などと切り捨ててしまうのも困りものです。
旧約聖書がその後の西洋思想や生活に大きな影響を与えていることは間違いないのですから,相応に価値ある古典として,その大きな存在感を鑑みる必要があるでしょう。
旧約聖書のエピソードを読んでいると,「異教徒」としてはあまりに理不尽だったり,すんなり納得できないこともあります。
これは,異なる文化的背景に触れた時の抵抗感に他なりません。
僕たちは現代日本の思想背景の中で育ち,自覚せずともある種の考え方の型にハマっている可能性があります。
自分なりの考え方の型をもっておくこと自体は良いことだと思いますが,時には異文化に触れて,逆射影的に自分の型を客観的に見つめ直すことも大切だと思います。
『旧約聖書を知っていますか』の中には,旧約聖書の記述をサルトルの実存主義との対比として考える節があります。
日本人も倫理哲学の授業などでサルトルを習いますが,サルトルの提言が当時の西洋文化にとってどのようなインパクトをもっていたのか,彼らの思想背景を理解していなければ,その影響度合いも理解できないでしょう。
旧約聖書のエピソードを知ることは,物語的な面白さがあることはもちろん,西洋思想のルーツを知るという意味でも,大きな価値があるものだと思います。
『旧約聖書を知っていますか』非常にオススメです。
- 作者: 阿刀田高
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/05/17
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/ゴドー