こんばんは,ゴドーです。
東京藝術大学 大学美術館に行ってきました。
目当ては「藝大コレクション展 2021」。
重要文化財を含む貴重な作品を鑑賞することができました。
しかし,同時開催されていた「再演 ―指示(インストラクション)とその手順(プロトコル)」展がとてもよかった!
まだ咀嚼しきれていませんが,非常に良い刺激になるというか,新しいアイデアを学んだ気がします。
キーワードは作品の「同一性」。
即興的に展示を構成したインスタレーション作品や,バクテリア等の生き物を使ったバイオメディア・アート作品など,作品を再演する際に全く同じモノを提示することが難しい作品があります。
こういった作品について,作品を作品たらしめているメッセージ性はどのように再現されうるのか?
その回答として,作品の制作過程や展示方法を書いた「論文」ないし「説明書」を作り,これらを込みでひとつの作品としている,ということだと理解しました。
個人的には,このような芸術のあり方は全く知らなかったので,大いに驚きましたね。
作家が死去したり,老化によって作品の「あるべき姿」を判断できなくなったりしたとき,作品の同一性は失われるのか?
展示に添えられた文章を読む限り,失われると考える作家さんもいれば,「私が不在となっても作品が進化し続けるような,そういうものであってもよい」という意見もあって興味深かったです。
科学界は「再現性の担保」を目指して論文というフォーマットを生み出しました*1。
「読めば研究が再現できる」という高い再現性を期待された科学論文に対し,芸術作品はメッセージの伝わり方がどうしても鑑賞側の感性に委ねられているとは思います。
それでもなお,発信側の同一性を担保するべく様々な工夫がなされていることは新鮮な学びでしたし,作品メッセージを表現しようというパワー・ある種の執念を感じました。
それでは,また。
/ゴドー
*1:とはいえ,全ての論文が本当にそれを読んだだけで研究再現できるものになっていないのが現実ですが。