プロジェクション・フィルム(仮)

いろいろ考えたことを言語化して焼き付けておくためのブログ。話題は研究・身体・生活から些細な日記まで雑多に。ほぼ毎日21時更新です

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ワクチン忌避につながる「5C」

こんばんは,ゴドーです。


徐々にワクチン接種が進む一方で,ワクチン忌避の声はSNSを中心に依然として一定の勢力を誇っています。

新型コロナに関するニュース記事やツイートのコメント・リプライ欄を見ると,ほぼ確実にワクチンを危険視する発言が書き込まれていますね。

SNSコメントの量は必ずしもワクチン忌避者の数と比例しないとはいえ,なぜこれほどまでにワクチンに否定的なのでしょうか。


ワクチン忌避の原因となる心理的な要因分析について,救急医の木下先生がTwitterスペースで紹介されていたのでメモしておきます。

元論文はおそらくこれ

昨年発表されたもので,春頃に日本のニュース記事で取り上げられてもいたようですね。


この論文曰く,ワクチン忌避*1の考え方を生む原理は大きく分けて5つ*2

- confidence(信頼)… ワクチン自体や行政・公共機関に対する信頼性
- complacency(油断)… ワクチン接種しなくても大きなリスクはないとの考え
- constraints(制約)… ワクチン接種できる場所がなかったり,お金がかかったりして,接種まで辿り着けないこと
- calculation(計算)… ワクチンに関する情報の取捨選択
- collective responsibility(互恵)… 公共衛生に関する考え方

Betsch C, Bach Habersaat K, Deshevoi S, et al, "Sample study protocol for adapting and translating the 5C scale to assess the psychological antecedents of vaccination", BMJ Open 2020;10:e034869. doi: 10.1136/bmjopen-2019-034869

たとえば,ワクチンを打ちたくても予約が取れないのはconstraintsの問題だし,重症化予防効果のベネフィットよりも副反応のリスクばかり強調して情報収集しているのはcalculationの問題であるということになります。

春頃によく言われていた「若年層は重症化しないのだからワクチン接種は不要」というのはcomplacencyですし,confidenceが最大レベルで欠如したものがいわゆる陰謀論でしょう。

最後のcollective responsibilityについては,ワクチン接種は自分のためではなく身近な人や社会全体のためになるということで,集団免疫の概念を理解できるか,また自分だけはワクチンを打たずに周囲の免疫にタダ乗りしようというフリーライダー的思想を持っているかどうかといった評価軸になります。


この分類が実際の施策改善にとって使いやすいものかどうか分かりませんが,少なくともひとつの分類が提供されたことで,世の中で起こっているワクチン忌避の原因がある程度構造的に理解できますし,また他の分類を相対評価する基準にもなります。

ワクチン忌避的なコメントを見たら,「5C」を念頭に分析してみようと思っています。


それでは,また。

/ゴドー

*1:ここで言うワクチン忌避には,ワクチンを打ちたくても打てないという人も含みます。

*2:それぞれの日本語訳は僕の意訳です。