前回の記事で、「地方集住」という意見を述べました。過疎化が進む地方では、人や物の移動にかかるエネルギーを節約し、公共福祉の効率を高めるために、小都市規模で集住すべきだという考えです。
前回も述べましたが、人々が集まって生活するときの人数や生活圏の規模には、大きすぎず小さすぎない適切なサイズ感があるのだろうと思います。際限なく集まっていけば、色々と問題が発生するであろうことは想像に難くありません。実際、都心近傍に住んでいると、東京の生活規模は、適切な大きさを超えてしまっているように感じます。
新宿のカフェは座れない
友人と遊ぶときは、よく新宿を利用します。理由のひとつは、交通の便がよいこと。大体が、新宿以西の中央線沿いか、もしくは大宮あたりに住んでいるので、新宿は集まりやすいスポットのひとつです。
もうひとつの理由としては、お店の選択肢が広いことです。娯楽にせよショッピングにせよ、大は小を兼ねる方式で、とりあえず新宿に行けば目的が達成されます。レストランの数もすさまじいです。
しかし、流石新宿と思わされるような店舗数の傍ら、新宿はなかなかお店に入れないという印象もあります。夜ご飯などは、少し待つか予約を入れておけば、まぁほぼ確実にお店に入れると思うのですが、夕方ごろにちょっとお茶したいときなど、カフェに全く座れません。
店舗の選択肢自体はもちろん多いのです。ただ、あっちのスタバはどうだ、こっちのマクドナルドはどうだと、あちこち駆けずり回ってようやく空き席を見つける流れがほとんど。集まってくる人間の数に対して、設備の規模が追い付いていないように感じます。
人も設備もダウンサイズすべき
設備が人間の数に追い付けていないもう一つの例としては、朝晩の通勤ラッシュもそうだと思います。毎朝毎朝、超満員の車両に人を押し込んで運行している様子は、よくオペレーションが回っているなと感心するばかりです。実際、日本の鉄道会社はすごいと思います。
一方で、なぜここまで多くの人が都内に出てくる必要があるのかという疑問もあります。都内には多くの設備があり、そこで働く人も大勢必要なのは分かりますが、そもそも都内の面積では、どんなに高いビルを建てて設備を増やしても、集まってくる人の規模にかなわないのではないでしょうか。過密化したあまり、サービスが十分行き届かないくらいなら、人も設備もダウンサイズするべきだと思います。
そもそも出勤しないという解決策
東京都は「時差Biz」という出勤時間をずらすキャンペーンを始めているようですが、どこまで効果があるでしょうか。そもそもラッシュアワーに皆が出勤してくる理由は、仕事相手がその時間に出勤してくるからで、自分たちだけ出勤時間をずらすということは難しいように思います。
ラッシュを本質的に解決するためには、出勤時間をずらすのではなく、そもそも出勤しない働き方モデルが必要だと思います。少子高齢化の時代、省力化のために仕事はどんどん電子化され、自動化できるところは自動化されていくはずです。電子データに対して作業をするだけなら、作業場所は都内のオフィスである必要はなく、いわゆる在宅ワークで十分だと思います。ただ、サイバーセキュリティ上の問題は気になるので、仕事専用の機能制限した端末の配布や、仕事用回線などが必要になるかもしれません。
一方で、メールや電話越しではなく、面と向かって話すのが一番早く仕事が進むということは事実です。在宅ワークを推進するにあたって、このあたりがネックになるかと思いますが、今でもテレビ電話で会議をすることは当たり前ですし、より「面と向かって会話をしている」感覚を出すために、VR技術を利用していけばよいと思います。
VTuberを自分のアバターで
在宅ワーク中にテレビ電話を使うとなると、気になるのは背景に自宅の内装が映ってしまうことです。映像会議のためだけに部屋の一角だけ特に掃除するのも面倒ですし、家族やペットなどが映り込んでしまう可能性もあります。部屋に単色の衝立などを用意して、クロマキー合成するというのも非現実的です。
このあたりは、機械学習等を上手く使って、利用者のところだけを上手く切り抜くようにすればよいと思います。カメラとの距離や照明条件はそれほど大きく変動しないだろうことを考えると、決して不可能ではないかと。
そもそも、利用者本人の姿が映る必要はなく、利用者の動作に同期して動くアバターがあればよいのだと思います。つまり、VTuber(バーチャルユーチューバー)の方々がやっているアレです。現在はVTuberのようなことをやろうと思うと、環境設備にかなりのお金がかかってしまいますが、ビジネスでの利用というマーケットが開かれれば、自然とコストダウンしていけると思います。
ビジネスシーンでの利用を考えると、アニメキャラのようなアバターはふさわしくないかもしれません。むしろ、利用者であるビジネスパーソン本人を模したアバターが使われるだろうと思います。ビジネス用のアバターを専用に作るビジネスが半公共的に行われたり。
いつか面と向かって会うことがゼイタクになるかも
触覚をフィードバックする機構の研究もありますが、VR技術に比べて安価なデバイスにするのが難しいように思いますので、VR会議時代になっても、相手と握手をするためには、やはり直接会うしかないかもしれません。
バーチャルでのアバターを介したコミュニケーションが当たり前になると、このように面と向かって人と会うということが、相当コストのかかるリッチな選択肢になるかもしれません。
いくら電子化が進んでも、人間の意識が物理的な身体に宿るものである以上*1、普段食べる食料など、物理的なものは生存に必要不可欠です。限りあるマンパワーやエネルギーは、このような生活必需品を運搬するために利用するのが優先です。人が乗り物で移動するというのは、それこそ休日の旅行や、特別なビジネスシーンなど、まさにゼイタクな行動に変わっていくのだと思います。
途中からややSFじみた話になってしまいましたが、エネルギーにも限りがあるなか、人間も減っていきますし、なるべく人や物の移動コストを節約する構造が必要になるのだろうと思います。そのためには、ひとつは集住ですし、またひとつは電子化・自動化です。
人間の活動は(少なくとも今のところは)身体性と切り離すことができませんし、当分の間、物理的な接触・いわゆる現実空間での交流も持続していくでしょう。しかし、一方で、電子空間に軸を置いた、もしくは電子空間で閉じたインタラクションも、今後ますます増えていくのだろうと思います。
*1:いつかこの制約が外れる時代もくるかもしれませんが