プロジェクション・フィルム(仮)

いろいろ考えたことを言語化して焼き付けておくためのブログ。話題は研究・身体・生活から些細な日記まで雑多に。ほぼ毎日21時更新です

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なぜ陰謀論者に反論データを投げかけても無駄なのか

こんばんは,ゴドーです。


昨日の記事で紹介した『楽しみながら学ぶベイズ統計』。

面白いトピックが数多く取り上げられた本ですが,その中でも面白かったトピックのひとつとして,「なぜ陰謀論者を納得させられないのか」というものがありました。


陰謀論者に対して反論データをぶつけても,納得しないばかりかむしろ持論への確信を強めることがあります。

これは,ひとつには反発心があるのかもしれませんが,ベイズ的に考えると,陰謀論者の中ではむしろ反論データが持論の信頼性をより高めることになっているのかもしれません。

ある仮説H1と対立仮説H2があったとき,もし全てのデータDに対して常にH1がDを説明する*1ならば,いくらH2をぶつけてもH1を信じ続けるでしょう。

たとえばH1が「H1に不利なデータは全て陰謀によるもので,真実であるH1を否定したい反対勢力によるものだ」という性質をもつならば,あらゆるデータがH1を支持することになり,反論すればするほど陰謀論者はますますH1への確信を強めていくという結果になってしまいます。


では,陰謀論に出会ったらどう向き合えばよいのか?

まずは反論データをぶつけるのではなく,「どのようなデータがあれば持論を覆すか?」ということを質問すべきですね。

仮に「持論を覆すことはない」という回答が返ってくるならば,上述した「あらゆるデータが持論を支持する」状態になっているということなので,最早その人とは距離を置くしかないでしょう。

そもそも議論というものは考えをアップデートするために行うもので,頑として意見を変えないと決めている相手と行う価値はありません。

反論教師的に考えると,自分自身も常に意見を変える柔軟性を残し続けなければならないということでしょう。


コロナ禍のSNSで様々な陰謀論者を観測した経験からみても,非常に納得できる解説でした。


それでは,また。

/ゴドー

*1:確率の言葉で言えば,事前確率 P(D|H1) が常に1。